【登山初心者向け】レイヤリングとは?基本の3層構造と季節別コーデを徹底解説!

「登山を始めたいけど、どんな服を着ていけばいいの?」 「よく聞く『レイヤリング』って、一体どういう意味?」

登山に興味を持ったばかりの初心者にとって、服装選びは最初の大きな壁かもしれません。普段着で登ってしまい、汗で体が冷え切ってしまったり、逆に暑すぎてバテてしまったり…。そんな経験は、せっかくの登山の楽しみを半減させてしまいます。

この記事では、そんな登山初心者の悩みのタネである「レイヤリング」について、その意味から具体的な方法、季節ごとのおすすめの組み合わせまで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説していきます。

この記事を読み終える頃には、あなたはレイヤリングの基本をマスターし、次の登山では自信を持ってウェアを選べるようになっているはずです。快適で安全な登山のために、ぜひ最後までじっくりと読み進めてください。

目次

1. 登山の服装の基本「レイヤリング」とは?

まず、結論からお伝えします。

レイヤリングとは、機能の異なる服を「重ね着」することです。

なんだ、ただの重ね着か、と思った方もいるかもしれません。しかし、登山のレイヤリングは、ただやみくもに厚着をするのとは全く違います。それぞれのウェアが持つ役割を理解し、状況に応じて脱いだり着たり(脱ぎ着)することで、常に体を快適な状態に保つための、非常に重要なテクニックなのです。

なぜレイヤリングが重要なのか?

登山の最中、私たちの体や周囲の環境はめまぐるしく変化します。

  • 天候の変化: 山の天気は変わりやすい、とよく言われます。さっきまで晴れていたのに、急に風が強くなったり、雨が降ってきたりすることは日常茶飯事です。
  • 気温の変化: 登山口と山頂では、標高差によって気温が大きく異なります。一般的に、標高が100m上がると気温は約0.6℃下がると言われています。つまり、標高差1000mの山では、登山口と山頂で6℃も気温が違うことになります。
  • 運動量の変化: 必死に坂を登っている時は汗だくになりますが、休憩中や下山時には体が冷えてきます。

もし、Tシャツ一枚や分厚いアウター一枚だけで登山に臨んだらどうなるでしょうか?

登り始めは良くても、汗をかいたまま風に吹かれれば、気化熱で一気に体温が奪われてしまいます。これを**「汗冷え」**と呼び、体力を消耗させるだけでなく、夏でも低体温症に陥る危険性がある、登山における非常に怖い現象です。

レイヤリングは、こうした様々な変化に対応し、「暑さ」「寒さ」「汗冷え」「風」「雨」といった不快や危険から体を守るための、いわば”鎧”のようなものなのです。

2. レイヤリングの基本!「3つの層」の役割を徹底解説

レイヤリングの基本は、「ベースレイヤー」「ミドルレイヤー」「アウターレイヤー」という3つの層(3レイヤー)で構成されます。それぞれの層が持つ役割をしっかり理解することが、レイヤリングマスターへの第一歩です。

[3つのレイヤー構造を示したイラストの画像]

① ベースレイヤー(肌着・アンダーウェア)

  • 役割: 肌から汗を素早く吸い上げ、拡散させて乾かす「吸湿速乾性」が最も重要な役割です。肌を常にドライに保ち、汗冷えを防ぎます。
  • 素材:
    • 化学繊維(ポリエステルなど): 非常に速乾性が高く、価格も手頃。登山用ベースレイヤーとして最も一般的です。汗をたくさんかく夏場や、運動量の多い登山におすすめです。
    • 天然繊維(メリノウールなど): 保温性と吸湿性に優れています。汗をかいても冷えにくく、防臭効果が高いのが特徴。汗をかく量が少ない冬場や、休憩時の快適性を重視する場合におすすめです。
  • 絶対にNGな素材: コットン(綿)です。コットンは吸水性が高い反面、乾きが非常に遅いという致命的な欠点があります。濡れたコットンTシャツは体温を奪い続け、汗冷えの最大の原因となります。登山家の間では「死の綿(デス・コットン)」と呼ばれるほど危険視されています。普段着のTシャツや下着は、絶対に山へ持ち込まないようにしましょう。

② ミドルレイヤー(中間着)

  • 役割: ベースレイヤーとアウターレイヤーの間に着ることで、体温で暖められた空気の層を作り、体を保温する「保温性」が主な役割です。セーターやカーディガンのような役割をイメージすると分かりやすいでしょう。
  • 素材:
    • フリース: 軽くて保温性が高く、濡れても乾きやすいのが特徴。最も汎用性が高く、初心者の一着目として最適です。
    • ダウン: 非常に軽く、高い保温性を誇ります。ただし、水濡れに弱く、濡れると保温力が著しく低下するのが弱点。休憩中や山小屋での防寒着として最適です。
    • 化繊インサレーション(中綿): ダウンの弱点である水濡れに強く、濡れても一定の保温性を保ちます。ダウンほどの軽さやコンパクトさはありませんが、行動中の保温着としても使いやすいのがメリットです。
  • 選び方のポイント: ミドルレイヤーは、レイヤリングの中で最も脱ぎ着する頻度が高いウェアです。季節や山の標高に合わせて、薄手のものから厚手のものまで、いくつか種類があると便利です。

③ アウターレイヤー(外着)

  • 役割: 風や雨、雪など、外部の厳しい環境から体を守る「防風性」「防水性」が主な役割です。いわば、体を守る”シェル(殻)”です。
  • 素材:
    • ハードシェル: 防水透湿性素材(ゴアテックス®︎が有名)で作られた、完全防水のジャケット。雨や雪が降る悪天候時に必須のアイテムです。内側からの汗(水蒸気)は逃しつつ、外からの雨は防ぐという高機能素材が使われています。
    • ソフトシェル: 撥水性と防風性、そして高いストレッチ性を備えたジャケット。完全防水ではありませんが、小雨程度なら弾き、何より動きやすいのが特徴。晴れた日の防風着や、小雨時のアウターとして活躍します。
  • 選び方のポイント: 日本の山は天候が変わりやすいため、基本的には**ハードシェル(レインウェア)**を必ずザックに入れておくのがセオリーです。ウインドブレーカー(ソフトシェルの一種)も便利ですが、あくまでレインウェアの代わりにはならないと覚えておきましょう。

【コラム】忘れがちな「下半身のレイヤリング」

レイヤリングは上半身だけでなく、下半身も同様に重要です。

  • ベースレイヤー: サポートタイツや機能性タイツ。汗を吸い、筋肉のブレを抑える効果も期待できます。
  • ミドルレイヤー: 登山用のパンツ(トレッキングパンツ)。ストレッチ性があり、撥水性、速乾性に優れたものを選びましょう。
  • アウターレイヤー: レインパンツ。上半身のレインウェアとセットで必ず携行します。

特に寒い時期は、フリースやダウン素材のパンツをミドルレイヤーとして追加することもあります。

3. 実践編!状況に応じた「脱ぎ着」のテクニック

レイヤリングの3つの層を理解したら、次はいよいよ実践です。レイヤリングの神髄は「こまめな脱ぎ着」にあります。

「ちょっと暑いな」「少し肌寒いな」と感じたら、面倒くさがらずにすぐ行動するのが鉄則です。「汗をかく前に脱ぎ、寒さを感じる前に着る」を心がけましょう。

シチュエーション別・レイヤリングの組み合わせ例

シチュエーションベースレイヤーミドルレイヤーアウターレイヤーポイント
登り始め(緩やか)ONONOFF体が温まるまではミドルも着用。
急な登り(汗ばむ)ONOFFOFF暑さを感じたらすぐにミドルを脱ぐ。汗をかく前がベスト。
休憩中ONONON/OFF汗冷えしないよう、すぐにミドルやアウターを着て保温。
風の強い稜線ONONON風は体温を急激に奪う。アウターで風を完全にシャットアウト。
雨が降ってきたONON/OFFONすぐにアウター(レインウェア)を着用。中のミドルは気温に応じて。
山小屋・テント場着替えONON汗で濡れたベースレイヤーは必ず着替える。防寒着としてダウンが活躍。

これはあくまで一例です。大切なのは、自分の体感に合わせて、常に「快適」と感じる状態を自分で作ることです。

4. 【季節別】登山のレイヤリングコーディネート例

日本の山は四季がはっきりしており、季節によって最適なレイヤリングは異なります。ここでは、季節ごとの具体的なコーディネート例をご紹介します。

春・秋(3月~5月 / 10月~11月)

一年で最も気温の変化が激しく、レイヤリングの腕の見せ所となる季節です。朝晩は冷え込み、日中は汗ばむ陽気になることも。低山でも雪が残っている場合もあります。

  • ベース: 長袖の化学繊維またはメリノウールシャツ
  • ミドル: 中厚手のフリースジャケット
  • アウター: ハードシェル(レインウェア)
  • ボトムス: トレッキングパンツ + サポートタイツ
  • +α: 休憩時や朝晩の冷え込み対策に、薄手のダウンベストやネックゲイター、ニット帽があると安心です。

夏(6月~9月)

低山では熱中症対策が、標高の高い山(アルプスなど)では急な天候悪化や朝晩の冷え込みへの対策が必要です。汗をいかに素早く乾かすかが快適さの鍵を握ります。

  • ベース: 半袖の化学繊維シャツ(吸湿速乾性が最重要)
  • ミドル: 薄手のフリースや、長袖のシャツ(日焼け防止や朝晩の冷え対策)
  • アウター: 軽量なハードシェル(レインウェア)
  • ボトムス: 薄手のトレッキングパンツや、ハーフパンツ+サポートタイツ
  • +α: 強い日差しから頭を守るハットは必須。標高の高い山では、夏でも薄手のグローブやニット帽があると役立ちます。

冬(12月~2月)

低山でも雪が積もり、気温は氷点下になることも。他の季節とは全く異なる厳しい環境です。保温を最優先にしつつ、行動中に汗をかきすぎないよう注意が必要です。 ※本格的な雪山登山は、初心者だけで行くのは非常に危険です。経験者と共に行くか、まずは冬の低山ハイキングから始めましょう。

  • ベース: 保温性の高い厚手のメリノウールまたは裏起毛の化学繊維シャツ
  • ミドル: 厚手のフリースジャケット、またはフリース+ダウンベストの重ね着
  • アウター: 冬用のハードシェル(夏用より生地が厚く丈夫)
  • ボトムス: 冬用トレッキングパンツの下に、厚手のタイツを着用。必要に応じて、中綿入りのオーバーパンツも。
  • +α: ニット帽、冬用グローブ、ネックウォーマー(バラクラバ)、厚手の靴下は必須アイテムです。

5. 登山初心者がやりがちなレイヤリングの失敗例

最後に、初心者が陥りやすいレイヤリングの失敗例をいくつかご紹介します。これを読んで、同じ間違いをしないように気をつけましょう。

  • 失敗例①:下に着ているのが普段着のコットンTシャツ
    • これが最も危険な失敗です。何度もお伝えしますが、汗で濡れたコットンは乾かず、体温を奪い続けます。登山の際は、必ず化学繊維かメリノウールのベースレイヤーを着用してください。
  • 失敗例②:脱ぎ着が面倒で、汗だくになるまで我慢してしまう
    • 「どうせまたすぐ暑くなるし…」と脱ぐのを面倒くさがったり、「ザックを下ろすのが面倒…」と着るのを我慢したり。この”面倒くさい”が汗冷えや体調不良に繋がります。こまめな脱ぎ着こそ、レイヤリングの基本です。
  • 失敗例③:アウターに分厚いダウンジャケットを選んでしまう
    • スキーウェアのような分厚いアウターは、たしかに暖かいですが、登山行動中には暑すぎてすぐに汗だくになってしまいます。アウターはあくまで風雨を防ぐ”シェル”と考え、保温はミドルレイヤーで調整するのが基本です。
  • 失敗例④:レインウェアを持っていない
    • 「天気予報は晴れだから大丈夫」とレインウェアを持たずに出かけるのは非常に危険です。山の天気は予測不可能です。レインウェアは「雨具」としてだけでなく、「防寒着」「防風着」としても使える万能アイテム。必ずザックに入れておきましょう。

まとめ:レイヤリングを制する者は、登山を制す!

今回は、登山の服装の基本である「レイヤリング」について、詳しく解説しました。

  • レイヤリングとは、機能の違う服を重ね着すること
  • 目的は、汗冷えを防ぎ、常に体を快適な状態に保つこと
  • 基本は「ベース」「ミドル」「アウター」の3層構造
  • 神髄は「汗をかく前に脱ぎ、寒さを感じる前に着る」こまめな脱ぎ着
  • 絶対にNGなのは「コットン(綿)」素材

最初は少し難しく感じるかもしれませんが、一度山で実践してみれば、その効果と快適さを実感できるはずです。完璧なレイヤEリングを最初から目指す必要はありません。まずは基本の3レイヤーを揃え、自分の体感と向き合いながら、少しずつ自分に合ったスタイルを見つけていきましょう。

正しいレイヤリングをマスターすれば、登山の快適性や安全性は格段に向上します。ウェアへの投資は、あなたの登山ライフをより豊かで楽しいものにしてくれる、最高の自己投資です。

さあ、レイヤリングという頼れる”鎧”を身にまとい、安全で快適な山登りに出かけましょう!

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