「キャンプ最高だったね!」
仲間や家族と自然の中で過ごした楽しい時間。美味しいごはん、焚き火を囲んでの語らい、満点の星空。しかし、そんな最高の思い出の後には、必ず「撤収」という現実が待っています。
中でも多くのキャンパー、特に初心者の頭を悩ませるのが「テントの片付け」ではないでしょうか。
「何度やっても、テントがパンパンで収納袋に入らない…」
「空気を抜いているはずなのに、なぜか膨らんでしまう」
「無理やり押し込んだら、袋が破れそう…」
楽しいキャンプの最後に、テントと格闘して汗だくになり、イライラが募ってしまう。そんな経験、ありませんか?
安心してください。テントの畳み方には明確なコツがあります。この記事で紹介する手順とポイントをしっかり押さえれば、今まで苦労していたのが嘘のように、誰でもスムーズにテントを収納袋に収めることができるようになります。
この記事では、以下の内容を網羅的に解説していきます。
- テントが袋に入らない根本的な原因
- 畳む前に必ずやるべき下準備
- 基本となるドームテントの正しい畳み方
- テントの種類別(ワンポール、2ルーム等)の畳み方
- テントを長持ちさせるための保管方法
この記事を読めば、次回のキャンプからは撤収作業がストレスフリーになり、キャンプの始まりから終わりまで、100%楽しめるようになるはずです。
第1章:なぜ?テントが収納袋に入らない3つの根本原因
そもそも、なぜあんなにコンパクトだったはずのテントが、一度設営すると思うように畳めなくなってしまうのでしょうか。多くの人が陥りがちな原因は、主に次の3つです。
原因1:テント内の空気が十分に抜けていない
これが最も多い原因です。テントは、設営時に空間を確保するために空気を取り込み、雨風をしのぐために気密性が高く作られています。その分、畳むときには意識的に空気を抜かないと、内部に空気が残ってしまい、風船のように膨らんだ状態になってしまうのです。
特に、フライシートとインナーテントの間に残った空気は抜けにくく、これが「畳んでもかさばる」最大の犯人です。
原因2:畳むときの「幅」が広すぎる
次に多いのが、畳むときの幅の問題です。多くの人は、なんとなくの感覚でテントを折り畳んでしまいますが、その幅が収納袋の長さよりも広いと、最終的に巻いたときに太くなりすぎてしまい、絶対に袋には入りません。
テントを畳む上で最も重要なのは、「最初に収納袋の長さに合わせて幅を決める」ことです。これを意識するだけで、劇的に収納しやすくなります。
原因3:そもそも畳む手順が自己流(間違っている)
初心者によくあるのが、設営の逆の手順でなんとなく畳んでしまうケースです。しかし、テントの畳み方には、空気を効率的に抜き、コンパクトにまとめるための「正しい手順」が存在します。
例えば、空気の逃げ道となる出入り口のファスナーを開けておく、重力や自分の体重をうまく利用するなど、知っているか知らないかで作業効率は天と地ほどの差が出ます。
これらの原因を理解するだけでも、あなたのテント片付けは大きく改善されるはずです。次の章では、実際に畳み始める前の「下準備」について見ていきましょう。
第2章:畳む前に!テントを長持ちさせる3つの下準備
「早く畳んで帰りたい!」という気持ちは分かりますが、焦りは禁物です。適切な下準備を行うことで、テントをスムーズに畳めるだけでなく、大切なテントをカビや劣化から守り、寿命を延ばすことにも繋がります。
準備1:テントの中を空にする(忘れ物チェック)
基本中の基本ですが、意外と忘れがちです。シュラフやマットはもちろん、天井のメッシュポケットに入れたヘッドライトや、隅に転がったスマホなど、テント内の荷物はすべて外に出しましょう。
小さな忘れ物が、畳む際の凹凸の原因になったり、最悪の場合、ポールなどと一緒に巻き込んで生地を傷つけてしまう可能性もあります。最後にテントの四隅をポンポンと叩いて、忘れ物がないか最終確認する癖をつけるのがおすすめです。
準備2:テントを完全に乾かす(カビ防止の最重要項目)
これが最も重要な下準備です。夜露や雨で濡れたままのテントを畳んでしまうと、次に広げたときにはカビだらけ…という悲劇が待っています。カビは悪臭の原因になるだけでなく、生地の防水コーティングを劣化させ、テントの寿命を著しく縮めてしまいます。
【乾燥のコツ】
- 天気が良い日: テントを裏返しにして、太陽と風に当ててしっかり乾かします。インナーテントとフライシートを別々にし、物干しロープなどにかけておくと効率的です。
- 時間がない・天気が悪い日: まずはタオルなどで全体の水分をできる限り拭き取ります。家に帰ってから乾かすことを前提に、大きなビニール袋などに入れて持ち帰りましょう。帰宅後の乾燥方法は第6章で詳しく解説します。
準備3:付属品(ポール、ペグ)を先に片付ける
テント本体を畳む前に、ポールやペグ、ガイロープなどの付属品を先に片付けておくと、作業スペースがすっきりして効率が上がります。
- ペグ: 土や泥をきれいに拭き取り、曲がっているものがあればその場で修正するか、分かるようにしておきましょう。本数も必ず確認します。
- ポール: ショックコードがねじれないように注意しながら、中央から折り畳んでいくとスムーズです。
- ガイロープ: テントにつけたままの場合は、きれいにまとめておきます。取り外している場合は、8の字巻きなどで絡まないように束ねておきましょう。
これらの付属品をそれぞれの収納袋に入れ、最後にテントと一緒に入れる「メインの収納袋」の隅に入れておくと、後で探す手間が省けます。
第3章:【基本編】もう入らないと悩まない!ドームテントの正しい畳み方 5ステップ
それでは、いよいよテントの畳み方を具体的に解説していきます。ここでは、最も普及している「ドームテント」を例に、誰でも再現できる5つのステップを紹介します。
ステップ1:インナーテントとフライシートを広げる
まずは、インナーテントとフライシートを地面に広げます。このとき、できるだけシワを伸ばし、平らになるように広げるのがポイントです。可能であれば、インナーテントの上にフライシートを重ねておくと、一度に畳めて効率的です。
【ポイント】 地面が汚れている場合は、グランドシートの上で作業するとテントが汚れません。
ステップ2:出入り口のファスナーを少し開ける
畳むプロセスで内部の空気を抜くための「逃げ道」を作る、非常に重要な工程です。全ての出入り口を完全に閉めてしまうと、空気が閉じ込められてしまい、うまく畳めません。
かといって全開にすると、畳んでいる最中に形が崩れやすくなるため、10〜20cmほど開けておくのがベストです。メッシュ部分も同様に少し開けておきましょう。
ステップ3:【最重要】収納袋の幅に合わせて折り畳む
ここがテント収納の成否を分ける最大のポイントです。
- 収納袋を横に置く: まず、畳もうとしているテントの横に、付属品を入れた**「メインの収納袋」**を置きます。
- 幅を決める: その収納袋の「長さ(縦の長さ)」を確認し、その長さより少し短くなるようにテントの左右を内側に折り畳んでいきます。
- 長方形を作る: テント全体が、収納袋の長さを一辺とする細長い長方形になるように形を整えます。
なぜ幅が重要かというと、最終的にこの長方形を端から巻いて円柱状にするためです。このときの幅が長すぎると、巻いた後で収納袋からはみ出てしまいます。逆に短すぎると、巻いたときに太くなりすぎてしまいます。
収納袋の長さを「絶対的な基準」として作業することで、この失敗を確実に防ぐことができます。
ステップ4:端から空気を抜きながら固く巻いていく
細長い長方形ができたら、いよいよ巻いていきます。ここでのポイントは「空気を抜きながら、きつく、固く」巻くことです。
- 巻き始める: ファスナー(空気の逃げ道)から遠い方の端から巻き始めます。
- 体重をかける: 一巻きごとに、自分の膝や体全体を使って上から体重をかけ、「ギューッ」と空気を押し出すように圧迫します。
- きつく巻く: 緩まないように、常にテンションをかけながらきつく巻いていきます。二人いれば、一人が押さえ、もう一人が巻くとさらに楽に、固く巻くことができます。
この「体重をかけて空気を抜く」工程をサボると、見た目は巻けていても内部に空気が残り、フワフワした締まりのない状態になってしまいます。
ステップ5:収納袋に滑り込ませる
きれいに巻き終えたら、最後の仕上げです。
- バンドで固定: 付属品にベルトや紐があれば、巻き終わったテントが広がらないように固定します。
- 袋に入れる: テントの先端を収納袋の奥までしっかりと入れ、袋を少しずつ回転させながら被せるように入れていくとスムーズです。無理やり押し込むのではなく、「袋を履かせる」ようなイメージです。
どうでしょうか?この手順で畳めば、驚くほどスムーズに、そして余裕を持って収納袋に収まるはずです。今まで苦労していたのが嘘のようです。
【応用テクニック:ポールを芯にして巻く】 畳むのに慣れてきたら、付属品のポールを芯にして巻く方法もおすすめです。
- メリット: 芯があることでより固く、真っ直ぐに巻きやすくなる。
- デメリット: ポールに無理な力がかかると、ショックコードやポール自体を傷める可能性がある。
行う場合は、ステップ3で長方形にしたテントの端にポールの収納袋を置き、一緒に巻き込んでいきます。
第4章:【種類別】テントの畳み方 応用編
基本的なドームテントの畳み方をマスターすれば、他の種類のテントにも応用が効きます。ここでは、代表的なテントの種類別に、畳み方のポイントを解説します。
1. ワンポールテント(ティピーテント)の畳み方
ワンポールテントは構造がシンプルな分、畳み方も比較的簡単です。
- 広げる: テントを地面に広げます。きれいな円形(または多角形)になるように整えます。
- 半分に折る: 中心から半分に折ります。
- さらに半分に折る: もう一度半分に折り、扇形(ピザを切り分けたような形)にします。
- 長方形を作る: 先端の尖った部分を内側に折り込み、全体の形が長方形になるように整えます。このときも、収納袋の幅を基準にすることを忘れないでください。
- 巻く: あとはドームテントと同様に、端から空気を抜きながら固く巻いていくだけです。
2. 2ルームテント・ツールームテントの畳み方
大型で複雑に見える2ルームテントですが、基本は同じです。「リビング部分」と「寝室部分」を分けて考え、それぞれを長方形にしていくイメージです。
- インナーテントを外す: 多くの2ルームテントはインナーテントが吊り下げ式なので、先に取り外して畳んでおくと作業が楽になります。インナーテントはドームテントと同じ要領で畳みます。
- フライシートを広げる: 巨大なフライシートを地面に広げます。
- 幅を合わせる: まず、収納袋の幅に合わせて、片方のサイドを内側に折り込みます。
- 反対側も折り込む: 反対側のサイドも同様に折り込み、巨大な長方形を作ります。サイズが大きいので、二人で作業するのが理想的です。
- 巻く: 端から体重をかけて、力強く巻いていきます。サイズが大きい分、空気も抜けにくいので、一巻きごとの圧着をより意識してください。
- インナーとフライを一緒に入れる: 最後に、畳んだインナーテントとフライシートを一緒に収納袋に入れます。
3. ポップアップテント・ワンタッチテントの畳み方
設営が一瞬で終わるポップアップテントですが、「畳み方が分からない」という声が最も多いテントかもしれません。これは、ワイヤーフレームをねじって畳むという特殊な方法をとるためです。
ポップアップテントの畳み方は、製品によってクセやコツが大きく異なります。
【最大のコツ】 購入時に付属している説明書や、メーカーが公開している公式動画を必ず見ることです。
自己流で無理に畳もうとすると、ワイヤーフレームが変形したり、破損したりする原因になります。動画で人の手の動きを見ながら、数回練習すれば必ずできるようになります。
一般的な畳み方の流れは以下の通りです。
- まず大きな円盤状になるように2つに折り畳む。
- 円盤の対角線を持ち、8の字になるようにねじる。
- ねじった勢いで3つの円になるように重ねる。
言葉で説明するのは非常に難しいので、必ず動画で確認してください。「(製品名) 畳み方」で検索すれば、多くの動画が見つかるはずです。
第5章:知っていると差がつく!テント撤収の裏ワザ&便利グッズ
基本的な畳み方をマスターした上で、さらに撤収を楽にするための裏ワザや便利グッズを紹介します。
裏ワザ1:結露を拭き取っておく
撤収日の朝、テントの内側が結露で濡れていることがよくあります。これを乾かす時間がない場合でも、畳む前に吸水性の高いタオルやセームタオルでさっと拭き取っておくだけで、持ち帰るテントの重量が軽くなり、帰宅後の乾燥も楽になります。
裏ワザ2:大きめの収納袋(コンプレッションバッグ)を用意する
どうしても純正の収納袋に入れるのが苦手、もっと楽をしたい、という方には、少し大きめの収納袋を別途用意するのがおすすめです。
特に「コンプレッションバッグ」は、ベルトを締め上げることで中身を圧縮できるため、多少畳み方が雑でも強制的にコンパクトにしてくれます。キャンプ用品店や登山用品店で手に入ります。
裏ワザ3:グランドシートを作業シートとして使う
テントの下に敷いていたグランドシートは、テントを畳む際の作業シートとして最適です。地面の汚れや湿気がテントに付着するのを防いでくれます。最後にグランドシートを畳めば、撤収完了です。
第6章:大切なテントを長持ちさせる!帰宅後の正しい保管方法
キャンプ場でテントをきれいに畳めたとしても、それで終わりではありません。帰宅後のメンテナンスと正しい保管が、テントの寿命を決定づけます。
ステップ1:必ずテントを完全に乾燥させる
キャンプ場で完全に乾かせなかった場合は、帰宅後、できるだけ早くテントを広げて乾かしましょう。湿ったまま放置するのは絶対にNGです。
【自宅での乾燥方法】
- ベランダ・庭: 最も手軽な方法。物干し竿などにかけて、風通しの良い場所で陰干しします。直射日光は生地を傷めるので避けた方が無難です。
- 室内: 部屋の中で広げるか、椅子などを利用して立体的に干します。サーキュレーターや扇風機で風を送ると早く乾きます。
- 浴室乾燥機: 最も効率的で確実な方法。浴室のポールに吊るして乾燥機をかければ、数時間でカラカラになります。
- 布団乾燥機: 袋状にして中に温風を送ることで、内部までしっかり乾かせます。
ステップ2:汚れを落とす
乾燥させるついでに、テントに付着した泥や草、虫などをきれいに落としましょう。固く絞った濡れタオルで優しく拭き取るのが基本です。洗剤を使うと防水コーティングを傷める可能性があるので、基本的には水拭きだけにしてください。
ステップ3:収納袋から出して保管する(理想)
これは上級者向けのテクニックですが、テントを最も良い状態で保管するには、純正の収納袋には入れずに保管するのが理想です。
なぜなら、きつく巻かれた状態で長期間保管すると、生地に折りジワがつき、その部分のコーティングが劣化しやすくなるからです。
大きめのメッシュバッグや、通気性の良いコンテナボックスなどに、ふんわりと畳んで入れておくのがベストな保管方法です。スペースに余裕がある方はぜひ試してみてください。
ステップ4:保管場所を選ぶ
保管場所は、「高温多湿」と「直射日光」を避けるのが鉄則です。押し入れやクローゼットの上段など、風通しの良い冷暗所が最適です。車の中や屋外の物置に長期間置きっぱなしにするのは、劣化を早めるので絶対にやめましょう。
まとめ:正しい畳み方をマスターして、キャンプを最後まで楽しもう!
今回は、キャンプ初心者がつまずきがちなテントの畳み方について、原因から具体的な手順、応用テクニックまで徹底的に解説しました。
最後に、重要なポイントをもう一度おさらいしましょう。
- 畳む前の下準備: テントを空にして、しっかり乾かす。
- 畳み方の最重要ポイント: 最初に「収納袋の幅」に合わせて長方形を作ること。
- 巻き方のコツ: 体重をかけて、内部の空気を抜きながら固く巻くこと。
- 保管方法: 帰宅後に必ず完全乾燥させ、風通しの良い冷暗所で保管すること。
最初は少し難しく感じるかもしれませんが、この記事で紹介した手順通りに2〜3回練習すれば、体で覚えることができます。
正しい畳み方をマスターすれば、撤収のたびに感じていたイライラや焦りから解放され、キャンプの最後の瞬間まで、心からリラックスして楽しめるようになります。
さあ、次のキャンプでは、スマートなテント撤収で仲間を驚かせてやりましょう!
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